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プロバイオティクスで病気予防

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病気の原因になるのも微生物なら、病気を防ぐのも微生物。

そのなかでも、乳酸菌・ビフィズス菌はがんを予防したり、血圧の上昇を抑えたり、免疫活性を活発にしたりと、様々な機能を有しています。こうした能力を示す乳酸菌・ビフィズス菌により作出されたものが機能性ヨーグルトです。

 最近よく言われるようになったプロバイオティクスとは、こういった健康に有益な作用をもたらす生きた微生物を指す言葉なのです。健康維持に好ましい働きをする微生物の働きを利用するのがプロバイオティクスの考え方です。

プロバイオテクスに用いる微生物の特徴

腸内フローラを改善し、宿主に有益な作用をもたらすプロバイオティクスに用いられる微生物の条件は以下が挙げられます。

  1. 胃酸や胆汁酸などの消化管上部のバリアー中でも生存できること

  2. 増殖部位として消化管下部で増殖可能なこと

  3. 便性改善、腸管内菌叢のバランス改善および腸管内腐敗物質の低下などの有効な効果を発現すること

  4. 安全性が高いこと

プロバイオテクスの健康表示

 プロバイオテイクスはヒトの正常な腸内フローラの維持と調節に重要な機能を持っています。プロバイオテイクスの持つ保健効果に関する研究は発展途上ですが、様々な機能研究がなされ、より優れたプロバイオテイクスが開発されると期待されています。

 

 ヨーグルトや乳酸菌飲料に代表されるプロバイオテイクスは、整腸作用はもちろん、大腸がんをはじめとする各種がんの予防、胃ガン発症との関係が深いとされるヘリコバクター・ピロリの活性をおさえる働き、血圧やコレステロールへの抑制効果、風邪予防効果、そして腸内環境改善効果など、乳酸菌・ビフィズス菌のいろいろな機能が注目されています。こうした機能のなかでも、特に最近、発がんリスクの低減作用およびアトピー性皮膚炎や花粉症への予防効果など、乳酸菌・ビフィズス菌の免疫調整力が注目されており、さらに新しいバイオマーカー(生物指標)による腸内環境改善作用について、最近の研究を紹介します。

発がんリスク低減作用

腸内細菌とがんの研究内容として、

  1. 腸内菌叢の変動 (有益な微生物効果)

  2. 腸内代謝活性の変動 (発癌物質産生の抑制)

  3. 腸粘膜透過性の正常化(毒素吸収の阻害あるいは遅延)

  4. 免疫活性の亢進(化学物質、炎症物質およびその他の因子の抑制促進)および

  5. 腸管内バリアーの強化

などが挙げられます。発がんと腸内フローラについて多くの報告がなされていますが、ヒト試験が充分でなく、明確な結論が出ていないのが現状です。

 プロバイテイクスの菌体成分および代謝産物には発がんのリスクを軽減し、予防に大きな働きを持つことが期待されています。発酵乳の消費量と発がんの関係を明らかにする疫学的な調査研究が1981年から1992年にかけてなされ、発酵乳と乳がん、膵がんおよび大腸がんとの関係についての調査報告がフランス、オランダおよびアメリカの国々から報告されました。その結論として、発酵乳の摂取が、乳がん、膵がんおよび大腸がんの発症を軽減し得ることが明らかになりました。

腸内環境改善作用

 腸内におけるプロバイオテイクスの機能解明は重要です。多くの報告ではプロバイオテイクスによる腸内フローラの変動を捉えて、その有効性を論じますが、これらがいかなる生理機能を有し、またその機能に関与する物質や機序を詳細に検討した報告はありません。プロバイオテイクスがどのようにして腸内フローラの改善作用を示すのかを明らかにすることが求められているのです。

 プロバイオテイクスの投与期間中には、 発がんに関与する腸内酵素(β-グルクロニダーゼ、アゾレダクターゼ、ニトロリダクターゼ、β-ガラクトシダーゼなど)の大便内活性の低下が報告されています。 また、B. lactis subsp. animalis LKM512を含むヨーグルトをヒトに摂取させると大便中のポリアミン(腸管組織の成熟に不可欠な因子)の量が有意に増加し、炎症マーカーであるハプトグロブリン量や突然変異源の有意な減少を報告しています。その機序としてポリアミン産生の向上が突然変異源の減少に特に結びついていると考えてられています。このようにプロバイオテイクスの効能を知る目的で新しいバイオマーカーを設定し、それらを測定することで機能を究明することが大切です。それにより腸内フローラとプロバイオテイクスの機能との関係がより明らかにされていくでしょう。

プロバイオティクスの機能研究進展のために

 健康表示は良好なヒト臨床試験の成績に基づいて示されていますが、今後ヒト試験が求められる健康表示についてはプロバイオテイクスを用いた試験が必要です。医学的・栄養学的に有用であると結論づけられるヒト試験法が提示され、それに基づいて試験が実施されることが極めて重要なのです。

 さらに今後のプロバイオテイクスの機能研究を進める上で以下の7項目に着目するべきと考えます。

  1. 発がん高リスク地域における臨床試験

  2. がん治療への応用試験

  3. 新規バイオマーカーによる免疫効果

  4. 発がん予防および腸内菌叢への効果判定

  5. 分子生物学的手法による腸内菌叢の多様性解析

  6. 使用菌株の安全性および安定性の確認

  7. 新規有用菌株の探索研究です。

 

 そしてこれらの試験研究を進める上で、これまで発表されている医薬品開発でのヒト臨床研究は参考として考慮すべきですが、プロバイオテイクスの有効性検証のための検査指針を早期に提示されなければなりません。我が国ではすでに1990年より健康増進法の下「特定保健用食品制度」が確立され、優れたプロバイオテイクスが市場に出ており、国民一人ひとりがそれの効能を享受できる環境にあります。

 今後のプロバイオテイクスの機能研究の進展は、菌株選定基準やヒト試験における有効性の指針が改善・向上されることにより、時代に即したプロバイオテイクスの医学的・栄養学的意義について論議されることを期待しています。

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